1991年8月に、終戦記念日の特番として放送されたスペシャルドラマ。
26年経った今なお、ネットで検索され続ける奇跡のドラマ。※2017現在。
1 ドラマ情報
原題: 金曜ドラマシアター NASA~未来から落ちてきた男
出演: 三上博史,中井貴一,田中好子,地井武男,古尾谷雅人,阿藤海,益岡徹,せんだみつお,ガッツ石松,高杉亘 他
放送日: 1991年8月23日 フジテレビ
放送時間: 21:03~23:07 (ビデオ:115分 ポニーキャニオン )
脚本: 鎌田敏夫
音楽: 久石譲
2 あらすじ
宇宙に飛び立ったスペースシャトルの乗組員3人は、宇宙で事故に見舞われる。
スペースシャトルは、光に吸い込まれ、気づくと3人は戦時中の日本へタイムスリップしていた。
3人の乗組員たちは、アメリカのスパイに疑われ牢屋に入れられてしまう。
3 人間関係
舞台は、1991年のジョージア州と50年前の戦時中の日本。
■登場人物
上野ノブオ - (演)三上博史 ・・・スペースシャトルのパイロット
父親は4歳の時に亡くなっており、父親の事は母親から伝え聞き知っている。
父親のことは、良い印象しか持っていない。
スーザン ・・・上野ノブオ の妻。
娘 ・・・ノブオとスーザンの娘。日本語を話せる。
ミスティ ・・・上野家の飼い犬。
橋口健次郎 -(演)中井貴一 ・・・戦地から呼び戻された将校
兄が戦地から逃げ出し射殺されたことを知り、自身も卑怯者と思われないよう、
必死に成果を上げようとする。
橋口雄一 ・・・橋口健次郎の兄。戦死。
橋口裕美子 - (演)田中好子 ・・・橋口雄一 の妻、橋口健次郎の義姉。
<人間関係図>
4 ストーリー
※かなりの確率で、ネタバレになります。
1991年ジョージア州・アトランタ
1台のリムジンがある家の前に止まる。
車から降りた老人は杖をつきながら家へと近づき、
庭に転がっている子供のおもちゃを眺めている。
家から出てきた子供は老人に近づき、尋ねる。
「うちへ来たの?」と
老人は、答える。
「昔 この家に住んでたことがあるんだよ」
家から出てきた犬が老人に駆け寄る
子供は尋ねる。
「ミスティを知ってるの?」
子供は、老人を家に招き入れる。
老人は家に入ると、目に入った家族写真を手に取った。
子供は言った「パパは宇宙で死んじゃったの」
※回想シーン 2か月前
階段を駆け下りる女性の手首からブレスレットが落ちる。
女性は、リビングにいた夫に、ブレスレットが切れてしまったと告げる。
夫は、「帰ったら新しいのを買ってやるよ」と返答する。
娘は聞く「パパはお月様へ行くの?」
男は、娘に向かって言う。
「宇宙でお仕事して帰ってくるんだ」
トレーニング期間を終え、宇宙飛行士を乗せたスペースシャトルは打ち上げられた。
宇宙では、ミッションが成功し、和やかな雰囲気が漂っている。
船内では、妻に向けてカセットテープのオーバーザレインボーが流れていた。
すると、音楽をさえぎり、船内にはコンピュータのアラートが鳴り出す。
対応に追われる飛行士たち。
何かに吸い寄せられ、コントロールできなくなったスペースシャトルは光の中へ。
気づくと、スペースシャトルは、不時着していた。
乗組員は、かろうじて無事だった。
船外に出ると、周りは見渡す限り砂漠。
気づくと、砂漠のはるか向こうに、子供が立っていた。
駆け寄ろうとする3人。
砂の丘の向こうに消えた少年を追いかけた次の瞬間、
丘の向こうから武装した兵士が走ってシャトルのクルーを取り囲んだ。
捕まった3人は、移送される時に、そこが日本であることに気づく。
・・・
橋口健次郎が汽車から降りると、プラットフォームで荷物を盗まれそうになっている女性が、
兄の妻・裕美子であることに気づく。
ふたりは、並んで健次郎の実家へと向かう。
舗装もされていない道路には、国民精神総動員の幕が。
健次郎は、実家に着き、遺骨の箱を見ると、赤い縄が巻かれていた。
そこで、裕美子から兄は戦場で逃げ出し銃殺され、父親はそれを恥じて自決したと聞かされる。
健次郎は、自分が兄のような卑怯者ではないことを証明したく、
マニラに戻してほしいと上官に詰め寄るが、
健次郎に与えられた仕事は、3日前に不時着した飛行機の乗組員の調査だった。
納得いかない健次郎。
健次郎が取り調べをおこなうと、乗組員たちは口をそろえて、
日本とアメリカが戦争していたのは、50年前だと言うが、信じることはできない。
取り調べは、ノブオの番となった。
健次郎を見たノブオは、健次郎を見たことがある気がしていた。
取り調べは続き、捕虜となった乗組員たちは、必死でスペースシャトルや宇宙のことを説明をするが、
健次郎たちは、相変わらず納得しない。
牢屋に入れられた3人は、外国の囚人に大統領がトルーマンであることを聞き、
自分たちの置かれている状況が、現実であることを悟る。
スペースシャトルの乗組員3人は、持っていたフィルムで宇宙での活動を説明するが、
一切信じてもらえず、さらに混乱していく。
ある夜、健次郎は、死んでいった仲間たちを思い出していた。
空襲が続く中、避難しようとはせず、死んでいった仲間の名前を叫び続けていた。
シャトルのパイロットたちをアメリカのスパイと疑っていた軍部は、
彼らの口を割らせるために、外国人捕虜の首をはねるよう橋口に指示する。
健次郎は躊躇しながらも、指示されたとおり、見せしめで捕虜の首をはねた。
裕美子は、捕虜を殺害した健次郎の本当の気持ちが分からなくなっていた。
一方、捕虜の首をはねた噂を聞きつけ、近づいてきた特高(特別高等警察)の男から、
裕美子が国に歯向かう活動に手を貸しているとの情報がもたらされる。
取り締まりがあるため、裕美子 を外出させないようにとのことだった。
ある夜、牢屋でノブオは、オーバーザレインボーを口ずさむ。
仲間は尋ねる「なぜ いつも その古い歌を?」
ノブオは答える「おふくろが教えてくれた・・・親父が好きだった曲なんだ」と。
ノブオの父親は、4歳の時に死んでいた。
突如、空襲警報が鳴り響き、照明が消えた。
3人が捕えられている場所も空襲に襲われ、仲間の一人が亡くなった。
爆撃で牢屋の壁は破壊された。逃げ出す二人。
逃げる途中、もう一人の仲間が追手に撃たれて死んでしまう。
ノブオは港で追い詰められた。後ろは海だった。
逃げ場を失ったノブオは、岸壁から海に飛び込んだ。
追手から逃げ延びたノブオは、海から上がり民家に逃げ込んだ。
逃げ込んだ家には、裕美子がいた。
裕美子は、木陰に隠れているノブオを見つけるが、
蔵にかくまった。
食事を用意した裕美子は、ノブオに届けるために、
蔵へと向かうが、追手に見つかってしまう。
蔵の中で争いになったが、蔵から抜け出し、
船で逃げ切った。
船で行きついた先は。
裕美子の実家へと向かう二人。
ノブオは裕美子に、自分は宇宙飛行士だったと打ち明ける。
丘からは奇麗な海が見える。
海を見ながら、宇宙の話をするノブオ。
ゆったりした音楽が流れ、つかの間の休息の時間。
二人は気づいていないが、後を追う船が。
船上には、健次郎が。
二人は、裕美子の実家へたどり着く。
庭から差し込む光を見ながら、ノブオはオーバーザレインボーを口ずさむ。
ノブオ「父が好きだった歌です。」
裕美子「お父様の名前は何ていうの?」
ノブオ「ケンジロウです」
裕美子 「他に覚えていることは無いの?」
ノブオ「左腕のここの所に傷があった」
・・・
裕美子「50年後の世界から来たという話が本当なら、あなたは・・・」
家は、追手に囲まれていた。
ノブオと裕美子は、捕まってしまう。
船で移送されるとき、裕美子は立ち上がり言った。
「あなたの言うことがもし本当なら、その人はあなたのお父様よ」
「何のことだ?何のことだ?」と問う健次郎。
母親から聞いていた父親の姿とは違った。
捕まったノブオは、これから起こるであろうことを必死に訴えるが、
スパイ容疑で銃殺刑を言い渡される。
刑の執行は、健次郎が担当することに。
健次郎「姉が貴様に言ったことはどういう意味だ?」
ノブオ「あなたは、俺の父だ」
オーバーザレインボーを口ずさむノブオ。
それでも、信じない健次郎。
健次郎は、8月6日午前8時に刑を執行すると告げる。
ノブオは、裕美子を広島から移すように言う。
広島に原爆が落ちることを告げるが、健次郎は信じなかった。
8月6日、刑の執行の瞬間。
強い閃光があたりを覆った。
そのあとは、ノブオがこれまで訴えたとおりだった。
時は過ぎ、二人は、朽ちた民家の居間にいた。
健次郎は言った「お前の父親の話をしてくれ。戦争が終わってどうしたんだ?」
戦犯として捕まったが、すぐに釈放されたこと。
父は、アメリカに渡り、ジャズや自由が好きだったこと。
アメリカは日本人にはやさしくなかったこと。。。
ノブオは、戦争後の父親の姿を語って聞かせた。
ノブオが語った通り、父親は捕まった。
捕まった健次郎を訪ねたが、すでに釈放された後だった。
そこには、健次郎が残した置手紙が。
「俺はお前の言う事を信じない」
スペースシャトルは、広島に原爆が落ちた日に、突然、消えていた。
ノブオは、砂丘から海に向かって、叫んだ。
※そして、シーンは現代へ。
写真を棚にそっと置く老人。
合わせて、ブレスレットを写真の前に置いた。
子供に手を引かれて、家を出る老人。
そこへスーザンが帰ってくる。
娘は説明する「前にここに住んでたんだって」
老人は、スーザンに向かって言う。
「とても懐かしくてね」
スーザンは、老人をお茶に誘うが、
老人は、誘いを断った。
家に入るとき、スーザンは老人に向かってたずねる。
「前にどこかでお会いしました?」
老人は、「No」と答えた。
リムジンに乗り込もうとする老人に駆け寄るミスティ(犬)。
老人「行ってくれ」
運転手「いいんですか?」
老人「いいんだ」
スーザンは、写真立ての前で、ブレスレットを見つける。
スーザン「これは?」
娘「あの おじいちゃんが置いていった」
スーザンは、気づいた。
老人がノブオであることを。
家を飛び出て「待って」と叫ぶスーザン。
リムジンは去っていた。ミスティ(犬)は、リムジンを追い続けていく。
ノブオは、ひとり呟く。
「ここに来るのに50年かかった」
「長い時間がいったんだよ
スーザン・・・」
スーザンは子供を抱き寄せ、車を見送った。
(終わり)
5 感想
坂本龍一(2020/04/12訂正) 久石譲さんの音楽が、
戦時中の殺伐としたシーンの中で流れ、
起こっていることが、あたかも夢物語のような印象を与える。
2020/04/12 Uさんからのご指摘により訂正させていただきます。
音楽の担当を、坂本龍一さんと記載しておりましたが、
再度、エンディングロールを確認したところ、久石譲さんの誤りでした。
ご指摘に感謝しますとともに、誤った情報を記載しており、すいませんでした。
この違和感が、視聴者の中に印象深く残っているのではないでしょうか。
50年の時を経て、戻ってこれたのに、ノブオがスーザンに、
自分のことを打ち明けなかった理由については、視聴者にゆだねられており、
さらに、思いを深くしているのかもしれません。
また、最後のエンディングロールで、ひたすら田園風景のまっすぐな道を走り続ける映像が、
人生は後戻りができないこと表している様に感じずにいられなかったです。
一か所、かなり無理があると思った部分があります。
「オーバーザレインボー」を聞いて、ノブオが話をしている人物が、
彼の父親であることと結びついたのか?
ピンポイントで結び付くには無理があるのではないかと思いました。
映像の古さを差し引いても、今でも観る価値があるドラマだと思います。
再放送は、望みが薄いですけど。
コメント
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